次のステージに一歩進んだ一年
2011年度はぷち通訳事業(ICTを活用した多言語医療支援)や講師派遣事業、人材育成事業が活動の中心であった。昨年の震災影響のため、事業内定や開始が後半に集中してしまったが、結果的にはセンターで最も多くの事業を行った1年となった。
「ぷち通訳事業」-開発してきたシステムの本格的な医療機関での導入や共同研究への参加
2011年は大きなICT関連の事業や研究が入り、「ぷち通訳」事業はセンターではもっとも活発な事業となった。10月より、滋賀県の多言語医療ネットワーク協議会からの委託で、医療通訳研修並びに多言語医療支援システムの設置導入(3病院)を行った。また、情報通信研究機構(NICT)やNEC、奈良先端科学技術大学院大学との多言語医療システムに関する共同研究を行った(3年の事業の初年度)。この研究事業では、センターはNECやNICTが開発した音声認識機能を活用した多言語医療システムの評価、医療用例会話コーパスの作成を担当した。
これまで和歌山大学や言語グリッドと行ってきた研究・開発の実績、医療通訳者の養成や派遣の実績が評価されての事業委託や共同研究が多くなった。
「講師派遣事業」-実践者を対象とした通訳研修を受託
今年度、講師派遣事業は減収すると予想していたが、韓国の翰林大学の学生の夏期・冬期研修、京都大学医学部附属病院からの医療者向けの長期研修、滋賀県の多言語医療ネットワーク協議会の研修委託など、長期間の大きな研修を複数担当することとなり、結果的に2010年度と比べ増収となった。これまでは通訳ボランティアの研修が中心であったが、ボランティア研修は減少し、病院勤務の通訳者や病院等の依頼を受けての現任者の実践的研修が増加した。
「人材育成・商品販売」-外国人のための医療ガイドブック、多文化書籍の編集、発行
昨年度出版した医療通訳テキストが好評を得て、1年で完売し、2012年度の入管法の改正や通訳技術、ポルトガル語の追加など第1版で入れることのできなかった内容を盛り込んで改訂版を出版した。また外国人医療カンファレンスと共に「医療者のための外国患者の接し方」などの医療者向けのテキストを出版することができ、こちらのテキストも大変評判が良い。また京都府からの委託を受け、外国人が医療機関を受診する際に指を差してコミュニケーションをとることができる「外国人医療ガイドブック」(英語、中国語、韓国朝鮮語、やさしい日本語)を作成した。
「ことさぽ-京都市医療通訳派遣事業」-10年を迎えるにあたっての振り返り
京都市医療通訳派遣事業は来年度で10年を迎える。10年目を迎えるに当たり、これまでの事業の振り返りと評価を行うため、医療通訳事業を利用する医療従事者、患者、通訳者に対し、アンケートを実施した。アンケートには、約200人近くの医療者、患者の方が協力してくれた。アンケートには感謝の言葉から、厳しいコメントなど、たくさん記載していただき、利用者が本事業対する期待とエールを強く感じることができた。この結果を踏まえ、次の10年に向けての事業の見直しを行うとともに、初心に帰る気持ちで、事業に取り組んで行きたい。
事業体制についての課題
昨年度取り入れたグループ制であるが、上半期はスムーズに稼働したものの、事業が集中する下半期には、複数事業を担当するスタッフに業務が集中してしまい、スムーズに進まない事業も一部でてきてしまった。昨年から、スタッフ間での業務量の偏りの改善、各スタッフが責任と主体性を持って事業に個々に関われるような役割分担、体制を目指してきたが、個々のリーダーにまかせた運用では事業管理に差がでてきてしまうことがあった。次年度は、個々の能力の違い、個性などを配慮していきながら、企画事業部と事務管理部にわけて事業を執行していきたいと考えている。もう少し、当センターにとってどのような事業運営が適切であるか模索していきたいと考えている。