概要:大学・企業・NPOなどが協働でインターネット上のサービス(言語グリッド)を利用して、医療現場で多言語間のコミュニケーションサポートを行うシステム の開発を行います。
研究グループ(外国人のための医療支援システム研究会)
主査 重野亜久里(多文化共生センターきょうと)
副査 吉野孝(和歌山大学システム工学部デザイン情報学科 吉野研究室)
幹事 宮部麻衣(和歌山大学システム工学部デザイン情報学科 吉野研究室)
会員 石田亨(京都大学情報学研究科社会情報学専攻 石田・松原研究室)
北村泰彦(関西学院大学理工学部情報学科 北村研究室)
重信智宏(独)情報通信研究機構言語グリッドプロジェクト)
前田華奈(多文化共生センターきょうと)
村上陽平(独)情報通信研究機構言語グリッドプロジェクト)
福島拓(和歌山大学システム工学部デザイン情報学科 吉野研究室)
坂本廣(関西学院大学理工学部情報学科 北村研究室)
内容:2005年からの協働事業も4年目を迎え、本年度は多言語医療受付支援システムM3(エムキューブ)では本格的な医療現場での導入を行うことができました。また多言語医療用例収集システムTackPad(タックパッド)では利用者同士が交流したり、評価するにぎわい機能も搭載され、登録用例数も増え、ボランティアが活動しやすいシステム基盤を構築することができました。
本年度は多言語医療受付支援システムM3(エムキューブ)を研究から現場での導入、普及に重点においてきました。まず、エムキューブの周知をはかるためイ ンフルエンザ対応フローを作成し、情報学や医療関連の学会で発表しました。インフルエンザの流行もあり関心を集め、3つの医療機関に設置(次年度設置を含 む)することができました。
また、京都市の推薦により、バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰を受け、エムキューブの知名度があがりました。また、次年度は有償サービスとして医療機関での普及、設置促進を進めていきたいと考えており、利用料の検討、契約書の作成、知 財に関する規約の作成などサービス提供のための基盤づくりをおこないました。
また2月には言語グリッドが開発した多言語コミュニケーションを支援するオープンソースソフトウェアtoolboxを活用して多言語 でのQ&Aの作成、多言語での相談などの提案を行いました。今後実際の活動のなかで活用できればと考えています。
概要:このシステムは医療現場(病院)において、日本語のサポートを必要とする外国人と医療者とのコミュニケーションをサポートするものです。病院での受診の流れや病院内の地図を検索したり、問診や会計を行う際、医療者との会話を多言語(中・ハングル・英・ポル・日)で見ることができます。センターでは主に、利用者である病院・患者間のニーズを具体化し、システムを作る研究者へ企画提案することや、コンテンツの作成、システム・研究者・病院をつなぐコーディネイト業務を担当しています。
協働体制:和歌山大学システム工学部デザイン情報学科
システム設置病院
京都市立病院(2008/09-)
京都大学医学部付属病院(2009/02-)
聖路加国際病院(2010/03-)
洛和会音羽病院(2010/03-)
成果実績
今年度の大きな成果は聖路加国際病院、洛和会音羽病院に設置ができたことと、来年度からの設置に向けて、提供側の基盤整備ができたことです。
聖路加国際病院、洛和会音羽病院への設置を通じて、今後多くの病院にM3のシステムを設置できるよう、機能の整理や病院からの依頼を受けて、病院ごとのカスタマイズを行い、設置を 行うまでの作業フローの整備を行いました。また今年度までは研究期間ということで、無償で設置をしていましたが、来年度からは有償での設置になるため、料金設定や規約等を作成しました。
機能面での成果としては、ユーザがM3を利用している時に不具合や使いにくいと思う部分を即システムサポートのメールに送信する機能を新たにつけ、素早く機能の改善につなげられるようにしたり、利用ログをインターネットで閲覧できるようになりました。また、これまでM3はパソコン上のアプリケーションソフトとして運用していたため、用例やシステムの変更の際には病院へ行って、システムを更新しなければいけませんでしたが、聖路加国際病院、洛和会音羽病院からは、インターネット上のデータをパソコンのM3というアプリケーションが呼び出す、というシステムにしたため、システムの変更があっても、病院にいかずにシステムの更新ができるようになりました。一度病院に設置した後は、メンテナンス・サポート等は全てインターネットを介してできるようになったため、今後利用病院が全国に増えても、対応できる基盤整備ができました。
また、今年度、M3は、平成21年度バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰式にて、内閣府特命担当大臣表彰奨励賞を受賞しました。
コンピュータを使って多言語による病院の受付サポートを行うM3は、日本語に不自由を持つ外国人住民の方と医療従事者との間のコミュニケーションのバリアフリー化を目指してきました。これまで、”ことばの壁”はコミュニケーションのバリアである、ということがなかなか認められてこなかったため、M3がこのような表彰を受けれたことは、大きな一歩だと感じています。来年度以降の設置を希望される病院も続々とご依頼を受けており、この受賞を弾みに大きく展開していきたいと考えています。
今後は病院の環境に併せて、病院ごとのカスタマイズ不要の部分だけでの導入などを検討したいと考えています。また本年度はwebでの問診機能の導入を予定していましたが、3病院の導入が決まったこととや予想以上にシステム上の改編が必要なため開発サイドの都合で次年度に持ち越すこととなってしまいました。患者にとってもwebの問診機能は利便性が高いため、早めに完成させたいと考えています。
◆バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰
この表彰は、高齢者、障害者、妊婦や子ども連れの人を含むすべての人が安全で快適な社会生活を送ることができるよう、ハード、ソフト両面のバリアフリー・ユニバーサルデザインを効果的かつ総合的に推進する観点から、その推進について顕著な功績又は功労のあった個人又は団体を顕彰し、もって、バリアフリー・ユニバーサルデザインに関する優れた取組を広く普及させることを目的とする。(バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰要領より 抜粋)
受賞者一覧はこちら
実施メンバー重野 前田 中本
報告 前田
概要保健医療のサポートを必要とする在日外国人の多く住む地区は全国に点在しているため、支援している団体や人の横のつながりは薄く、ネットワーク作りや情報共有がうまくできません。そのため、このシステムでは、外国人患者自身、医療者や通訳者等の外国人の保健医療に関わる人びとが、インターネットを介してコミュニティをつくり、より的確な多言語の医療用例・医療用語を検索、作成を行ったり、ノウハウや悩みを共有する場としての機能を持っています。また、最終的にはここで作られた医療用例・医療用語は「多言語医療受付支援システムM3」へつなぎ、常に正確で新しい用例の入ったシステムとして使えるようにする予定です。
成果、実績
今年度はこのプロジェクトに定期的に関わるインターンシップ生をつけたため、定期的にシステムを更新していくことができました。「歯医者さんで使うことば」「医療に関するオノマトペ」など、テーマを決めて、一定期間集中的にその用例を集めるというプロジェクト機能を運用しました。このようなボランティアベースでサイトをにぎわすためのプロジェクトを展開したのですが、短期間に終わってしまいました。未搭載機能や改善も必要な部分もあり、ボランティアとしては実験的な協力利用という感覚があり、システムの常連ユーザにはつながらな
かったようです。
次年度はボランティアがシステムを通じて、楽しい、またやりたいと思わせるにぎやいのシステムづくりやプロジェクトが必要であると感じていま す。新聞等で大きく取り上げられており、本年度中には未搭載機能を完成させ、より多くの人ひきつけるシステムにしていきたいと思っています。
実施メンバー 前田 重野
報告 前田