事業概要
グローバル化が進む現在、国境を越える人びとの移動はますます活発になりました。日本に住む外国人は220万人を超え、家族の呼び寄せや 国際結婚などにより日本で妊娠・出産・子育てをする外国人の数も増えてきています。しかし、日本で妊娠・出産には「ことば」の壁はもちろん、慣習、価値観 の違いや宗教など文化的な差異による混乱や戸惑いも多くあります。また妊娠から出産の間の妊娠届や母子手帳取得、外国人登録、各種支援制度、健診や予防接 種は各機関を渡る手続きが必要で外国人にはわかりにくく、困難を感じている妊産婦は少なくありません。そこで外国人ママ一人ひとりに寄り添いながら、多面 的なサポートを行う有償の通訳派遣事業を新たに開始する基盤整備を行いました。事業背景私たちはこれまで6年間、京都市、財)京都市国際交流協会と協働で京都市内の4つの医療機関へ医療通訳派遣制度を実施してきました。中国語を中心に、年間1500件をこえる多くの依頼に対応していますが、多くの課題も浮き彫りになってきました。職業としての医療通訳者の活動が難しいため、長期的な通訳者の確保が難しいこと、予算の限りがあり、予算内で医療通訳者の謝金、交通費、コーディネイターの謝金、派遣事務の人件費、通訳者の養成講座の実施、通訳者の養成(病院インターン)を行わなければならず、要望があっても派遣できる範囲や対応を規定せざるを得ない事情があり、柔軟な派遣、対応の拡大が困難であることなどです。固定された予算内では柔軟に対応すればするほど、事務局の負担が厳しくなる一方でした。患者さんの金銭的な負担もなく、行政との恊働事業ということで、よい面もたくさんありますが、このような公的医療通訳支援でできない対応をどうすればよいのか・・・今までは何でも公的な枠組みの中でやろうとしていました。しかし発想を変えて、有償のプラベート通訳と無償のパブリック通訳を両立し、多様なサービスを提供できないかと考えました。そこで特に近年のニーズが高くなっており、病院を超えサポート場面の発生する「妊娠、出産」における分野から医療通訳の派遣事業をスタートさせたいと考えました。単に有料というのではなく、有料でも利用したいと感じる細やかで多面的なサポートをしていきたいと考えています。
実施内容
4月〜 5月 事業案作成
9月〜 10月 ヒアリング(ヒアリング報告はこちら)
11月〜12月 通訳保険 契約、規約等の整備
1月〜 2月 講座企画、講師依頼 広報
3月 外国人ママのための医療通訳者養成課程 モニター利用広報開始
京都府の企業等・NPOからの提案型事業の採択が遅れたため、具体的実施は9月からとなりました。新規に2名のスタッフを事業コーディネイターとして採用しましたが、事業進捗に遅れがでたため、1月から2名のスタッフの協力を得て、予定通りすすめることができました。
また、これまで医療通訳の分野では、万一医療通訳者が誤訳をした際の保障の問題が長く取り上げられてきましたが、今回この事業を始めるにあたり保険会社との交渉し、新たに医療通訳行為に対する賠償保険を整備することができました。
外国人ママのための医療通訳者養成課程「ことば」で「いのち」を守るプロを養成する
外国人ママのための医療通訳者派遣事業」の即戦力となる通訳者育成を目的としているため、参加条件をもうけ、受講にあたり書類での選考を行い、少数精鋭での養成を行いまいました。最終的には3名の受講者が認定テストに合格し、4月から専門通訳者として活動スタートしています。
日程 2010年2月26日〜2月30日(全10回予定)
募集言語・募集人数 英語 5名
参加者 定員5名(募集定員5名)受講申請書を参考に書類審査で受講者を決定
認定者 3名(1名途中辞退、1名最終テスト不合格)参加 無料
会場ひと・まち交流館きょうと (京都市下京区河原町五条下る東側)
COCON KARASUMA (京都市下京区烏丸通四条下ル水銀屋町620番地)
●第1講義 2月26日午後2時〜5時
母子保健における在住外国人の現状と課題、母子保健における異文化(医療文化、患者文化を知る)外国人ママのための医療通訳派遣事業とは・・
●第2講義 通訳理論 3月2日午後2時〜4時
通訳理論、通訳技術、語学指導
●第3講義 通訳者理論2 3月5日午後2時〜4時
倫理、守秘義務、自己管理
●第4講義 母子関する医療知識 3月9日午後2時〜4時
妊娠から出産までの流れ、専門知識 (妊婦健診、検査、母親学級人工妊娠中絶、分娩)妊娠各期のポイント(前期・中期・後期) ロールプレイ:診察場面
●第5講義 母子に関する行政サービス 3月12日 午前10時〜12時
外国人母子に関する制度・手続き 行政での具体的な手続きロールプレイ:手続き説明
●第6講義 外国人ママの視点から 3月16日午後2時〜4時
日本での妊娠/出産の経験から,外国人ゲストを御招きする予定です
●第7講義 母子保健サービス 3月19日午後2時〜4時
妊娠出産関連のサービス、手続き(入院助産制度、乳幼児健診と予防接種)母子手帳の使い方、多言語の母子手帳を入手するには ロールプレイ:母子手帳
●第8講義 事例研究 3月23日午後2時〜4時
医療現場での事例から※ふりかえり
● 第9.10講義 場面別ロールプレイ 3月26日午前10時〜15時
健診、母親教室、制度説明、区役所
●修了認定テスト(筆記・通訳ロールプレイ)3月30日(予定)
テストで一定レベル以上の成績が取れれば専門通訳者として認定します
養成課程の参加対象・条件・性別、国籍不問(対象者の背景に近いママ、出産経験者歓迎)
・通訳者としての実務経験のある方(医療現場での通訳経験者歓迎)
・外国人支援に関心があり、外国人ママを支援したい方・基本全日参加可能な方、修了後のテストが受けられる方
・養成課程修了後、4月から京都市内で通訳者として週1〜3回程度活動可能な方・外国人ママの為の医療通訳者派遣事業における条件を満たしている方(※を除く)
言語能力の目安
・TOEIC 800以上/ TOEFL550以上/英検一級以上
・日本語能力検定一級以上実施体制 篠田 福元 高嶋 河崎 重野
財源:京都府 企業等・NPOからの提案型事業 委託金